イラスト 猫の目さま
文     小管


『 花 火 』



ほう・・・と溜息をついて肩に頭をもたげる。やっと2人だけになれたのだ…。
「どうしたの?疲れた?」
何と言ってよいのやら分らず、ただ、首をふるふると振って否定の意を伝える。
労わるようにキスをされて、項から肩にすべる指に期待は膨らみ、自然、袖を掴む手に力が籠る。
「今日は、素直なんですね…?」
すっかり感じ入った様子のオレにおまえは意地悪く咽喉の奥で嗤う…。

だが今は、その微妙な振動さえ抗いがたい愛撫でしかない…。


浴衣まで着せてもらって…、あんなに楽しみにしていた花火だったのに…。
ほんの少し指先を絡められただけなのに…。
きっと、おまえにとっては、ちょっとした戯れ程度のコト…。
なのに一人だけ勝手に高ぶって、気が付いたら訴えるようにおまえの顔を見つめてた…。
「もう…、帰りましょうか?」
なんだか苦笑するような笑顔で問われてしまえば、目を逸らしながらコクリと頷くしかなかった。

そうして、2人…、まだしばらくは続くであろう歓声を後に帰ってきてしまった…。



―――遠くで、まだ、花火の音が聞こえる…。

肩から浴衣がするりと落とされた…。
たまには、こんな風に全て委ねてしまうのも悪くないと思う…。



おまえだから…。



*  *  *  *  *



―――つい、悪戯心を起こしてしまった…。

「おまえと見たいんだ…。」
そう言って、あなたがはにかんだ笑顔を見せてくれたというのに…。

花火に夢中になってるあなたに嫉妬して、ほんの少し気を引こうと絡めた指の腹をさらりと撫で上げた。
ぴくりと反応する肩に気を良くした俺は、ゆうるりと手を握りこみ、次第にコトを意識した動きへと変えていったのだった。

―――結果…。寸時後には、花火からすっかり気が削がれた様子で、物言いたげに俺を見つめるあなたの顔があった…。
子供じみた自分のふるまいに思わず苦笑が漏れ、「もう…、帰りましょうか?」と彼を促した。



ドアが閉じるなり、溜息をついて肩にもたれかかってくる…。既に吐く息が熱い…。
「どうしたの?疲れた?」
分っているのに意地悪く問う…。詫びる気持ちはあるのに、こういった行動をとってしまう自分が恨めしい。

せめてもと、想いを込めたキスを落としていると、ふと全身を委ねるように彼の体重が預けられる…。
めったにない彼の振る舞いに歓喜する自分がいる…。
欲望のまま、するりと項から肩へと指を滑らし、月の光に白い背中を露わにする…。

「今度は、あなたの身体に花を咲かせて…」

返す答えは、既に甘い吐息のみ…。


来年の花火は最後まで見せてあげようと心の中で誓いつつ、今夜は、この誤算を愉しむことにしよう…。






2006/9/12

あんまり2人の表情や仕草が心臓ド真ん中で一日中頭から離れなかったせいか、 夢現につらつら文が浮かんできてしまいました。
猫の目さま、このような素敵な2人、ほんとうにありがとうございました。
このような駄文ですが、どうぞ捧げさせて下さいませ。

そして小心者の私の背中をつぃと後押しして下さったこうれんさま、 どうもありがとうございました。m(_ _)m
そして、なんと 月さま宅 のウラには、この後の猫の目さまの素敵な絵がございます。
TOPメニュー『探求の扉へのお誘い』→『直高、花火の夜のその後の』に収納されています。
絶対背後注意絵 ですョvvv
是非是非、ご覧下さいませ〜vvv
2006/9/28



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