直江はぴば&月さまのサイト 『花盗人』祝6周年の差し上げものに、月さんがSS書いて下さいました。
月さんのサイトの"2009年5月3日 直江BD&サイト6周年の部屋"でUPされた SS『やくそく』を、お言葉に甘えてこちらでもUPさせていただきますv
月さん、オトコマエでカワイイ高耶さん、ありがと〜vvv


☆やくそく☆ 文:月花草

「ねぇ高耶さん。」
ちらっと俺は愛しい人の顔を見る。
「なんだ?」
彼は定期試験の結果が悪かったので、いつもよりもぶっきらぼうMAXな顔で俺を睨むように見据えた。
どんなに仏頂面でも可愛い顔に違いはないんですけどね。
「覚えていますか?あの約束」
ギクッと高耶さんは肩を震わせて斜に構えて俺を睨んだ。
「や・・くそく?」
俺はしれっと言ってやった。
「そう、試験の前日に俺と交わしたあの”約束”ですよ」
「なんだったかな〜?」
俺はおおげさに驚いて見せた。
「酷い!あれほど念を押したのに。忘れたんですか?」
「え〜と・・・」
「あなた言いましたよね。『オレはこんどこそ全教科80点以上だ』って。勇ましく豪語したくせに。」
「そうだったか・・?」
「そうですよ。そのとき俺と約束したでしょ」
「・・・」
「80点以下が1教科でもあったらあなたからキスしてくれるって」
「・・・」
俺は盛大にため息をついた。
「俺は精一杯家庭教師をしましたよ。
ぜんっぜん、さっぱりなあなたの成績を少しでも伸ばすために。」
「殴るぞ」
今度は優しく微笑しながら耳元近くで低く囁く。
高耶さんは俺の声を気に入ってくれているらしいからだ。
「怨霊調伏に忙しくて、授業を休みがちなあなたを気の毒に思ったから。
実家と兄の仕事を必死に片付けて、時間の許す限りあなたの部屋に通って」
「で・・・でも、人生にはやってもできないコトがあるっつーか」
「そうですか。わかりました。
俺との約束なんて、あなたには破っても心が痛まない程度のものだったんですね」
そういって俺は高耶さんの勉強部屋から出て行こうとした。
「待て!直江」
怒った声で高耶さんが俺の腕を取って振り返らせ、襟元を掴みかかった。俺はとっさの事にバランスを崩して前のめりになった。
「男に二言はねえ」
そう言って高耶さんは唇を俺にぶつけてきた。
あまりにも不意打ちだったのでガツンと歯があたってしまった。
「む・・・」
「ふが・・・」
口元を押さえた俺の目の前に、やはり口を押さえて真っ赤になった高耶さんがいた。まだ俺を睨んでいる。
怒っているのでなく、羞恥で死んでしまいそうなのを睨む事によって虚勢をはっているのが分かる。
そんなには恥ずかしがらなくてもいいと思うのだけど。
「・・・無理して。まったくあなたという人は。こうするんですよ」
俺は高耶さんの頬に手を添えて柔らかな唇にそっと自分の唇を押し当てた。
空いた手のひらで頭ごと抱え込む。
ぎゅ〜と高耶さんも抱きついてくれた。
甘くて蕩けそうだ。
唇から波の様に全身に広がる艶めいた感覚。
半ば高耶さんの意地と勢いから出た約束だったけれど。
到底無理だと思われた内容の約束に、履行できないと知ってっいて俺はまんまと乗っかったわけだ。
もちろん、高耶さんを挑発してキスさせるように仕向けたのも、俺の作戦だったことは言うまでもない無い。


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