Precious ―雪灯り―


楽しかった、じゃあまたね、と帰る高耶を送っていく。彼の手には小さな紙袋が握られていてかさかさ音を立てている。 別れ際、春枝が高耶に渡したものだ。気になって訊いてみた。
「高耶さん、それはなあに?」
「あのね、おばちゃんが本堂の短くなった蝋燭くれたの。かまくらみたいに雪洞作って灯りを入れるととっても綺麗だからおうちの前で試してみてねって。 でも火をつけるのは直江かお父さんにしてもらいなさいって言うんだけど……」
語尾を濁してこちらを窺う顔に苦笑する。
雪の反射もあり日脚も伸びたこともあって、日は落ちていても外はまだほの明るい。もうちょっとだけなら雪遊びに付き合っても平気だろう。母公認でもあることだし。
「いいですよ。じゃ、高耶さんの家の前に作っちゃいましょう」
そう返事をすると高耶は本当に嬉しそうに頷いた。

半日留守にして積もったままの家の前の雪を寄せると、すぐに十分な量になった。
気温も少し上向いたのだろう、雪質も先程よりはよほど扱いやすくなっていて、 高耶とふたり流れ作業で雪を固め中をくり抜いてたちまち数個のかまくらが出来上がった。
「じゃ、点けますよ」
「ん」
期待に満ちた眼差しに見守られながら、雪室に据えた蝋燭に次々と火を灯す。
「うわあ!」
思わずもれる感嘆の声。
次第に濃くなる夕闇の中、雪洞全体が淡く発光しているよう。 微風にも揺れるか細い炎は、意外なほどの明るさで雪の壁に照り映え暖かなオレンジ色の光をあたりに放つ。
美しくて厳粛で、幻想的な眺めだった。





新しいパソに慣れなくて、しばらく燻ってたんですが、めんこい高耶さんに、急浮上しましたv(^_^)v
こうれんさん、どうもありがとね♪