「これはまたずいぶんと可愛らしいお客人だ」 それがオレに向けられた第一声。 「おいで。名はなんと言う?」 こいこいと手招きされても、まだその場を動けなかった。 爺さんはそんなオレを考え込むようにして暫く見ていた。 「はて、花精の化身なら普通は乙女と相場が決まっとるもんだが。……まあ菊の精ならその姿でも無理はないか」 それは独り言めいた小さな呟き。 やがて得心したようにひとつ頷くと、爺さんは、張りのある声でもう一度オレを呼ばわった。 「坊、名がないなら儂がつけてやろう。『高耶』というのは如何かな? 小さいながら凛とした風情を持つ坊の名に相応しいと思うがの」 |