ごろりと横になって目を閉じると、耳が痛くなるような静寂とそれに紛れた夜の物音が聴こえてくる。
裏山から響く梟の声。
何に驚いたか甲高い雉の叫び。
庭先からはまだ微かな虫の音。
前の道路を徐行する車の気配。
……タイヤが砂利を踏む異音。すぐ近くに。
そしてエンジンが止まり、 バタンとドアが開いて、閉まって、人の歩みが近づく足音。最初はゆっくり、次第に早足。

焦がれていた声が聞こえる。
―――高耶さん?高耶さん?!

ああ、理吉さんは知っていたんだ。直江が此処にやって来るのを。どうせなら、もう少しいてくれて直江と会ってくれたらよかったのに。
目は瞑ったまま、くすくすと笑いを洩らす。

血相を変えた直江が外から回り込んできたのは、それから、すぐ。
「高耶さん!」
抱きかかえたその瞬間に、高耶が目を開いた。

「おかえり、直江」
これまで見たこともないような、うっとりと花綻ぶような貌だった。


                                               「 夏休み -12- 」より


遅ればせながら、高耶さん、誕生日おめでとうございますv