『 残月楼夜話 番外 ―花簪― 』より

「楽しかった?」
かさばる荷物を引き受けながら、聞いてみれば
「うん!」
返るのは元気な返事と満面の笑顔。
年相応の子どもらしい表情に、自然と直江にも笑みが浮ぶ。
「それはよかった」
微笑みながら視線をあげた先に八重桜の若木が目に止まった。
同時に高耶も気づいたのだろう。とてとてと近づいてちょうど自分の背丈ほどの高さに咲いている花を眺める。
ぼってりと重たげな花をつけるこの種類の桜は、正直あまり好きではなかったのだが。 改めて間近に見れば、黄色い蕊を中心に幾重にもひらひら重なる花びらが光に透けて、たいそう可憐で美しかった。
数輪を摘み取って高耶の髪に挿してやる。思った通り、濃いピンクの花簪は高耶の黒髪によく映えた。

直江さんたら…。(*^_^*)