L'ESTRO ARMONICI ―焔―

「ああ、効いてきましたか?」
こともなげに直江が言った。種明かしをするように。
「変わった薬効があると言ったでしょう?この花の根茎には特殊な成分が含まれているんです」
「まさか……さっきの……」
事態を察して青ざめる高耶に柔らかく微笑んだ。
「そう。その粉末を膏に練りこんだ媚薬ですよ。物堅い貞淑なレディがどこまで奔放になるものか、効果のほどを殿下が知りたがりましてね。試すようにと私に賜ったんです。でも、ねえ……」
くっくっと、直江が猫のように喉で笑う。舌なめずりをせんばかりに。
「いくら主君の命とはいえ、今さら青いだけの令嬢を口説くのは真っ平なのでね。あなたは処女というわけではないけれど、ガードの固さは淑女以上だ。そのあなたがどんな風に変わるのか、私もすごく楽しみですよ」
約束通り私は指一本触れませんから。そう嘯いて直江は組んだ両手に頤を乗せる。
傍観を決め込む仕草に、目の前が暗くなった。


すみません、サイテーっすね?
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