L'ESTRO ARMONICI ― 一夜天女 5話目より―



凛然として侵しがたい気品さえ漂わせていたふたりを見送ってからたった数刻、 血相を変えた主と、その主に抱きかかえられて帰館した高耶の姿に、 生島をはじめ居合わせた者は、皆、声を失った。
そんな彼らに頓着せず、淡々と人払いだけを命じて直江は寝室に向う。
脚を支える片腕を外し高耶を寝台に下ろすと、膝立ちにさせたその身体を両腕で抱きしめた。

「……解りますか。高耶さん。着きましたよ?今、帯を解きますから。すこしだけ踏ん張っていて」
上臈装束のままでは背中に高々と結ばれた飾り帯が邪魔で寝かせることもできないのだ。 朦朧として胸にもたれる高耶に囁いて、打ち掛けを剥ぎ、帯を緩めに掛る。



「書いて〜」と言わんばかりに、絵を描いて強請ってしまった…。
帯がちゃうのは、そういう訳で・・・。

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