―イラズノモリ―






モリの恵み、よく熟れたスモモを届けてくれたのはいったい誰だったのか。 高耶の知らぬ間に、濡れ縁の端、籠いっぱいに盛られたそれは置かれていた。
四季折々、何かと差し入れてくれるモリの不思議にはずいぶんと慣れた。 だから今回も籠を押し戴いて感謝の念を飛ばし、遠慮なしにいただく事にする。
大ぶりの、まだ露をまとったように瑞々しい、見事なスモモだった。
掌に載せれば程よく重く、翠がかった薄い表皮に 思い切りよく歯を立てれば、はじける果汁と甘味ののった真っ赤な果肉。種の周りだけが僅かに酸っぱい。
たちまちひとつを食べ終えて種を放ると、高耶は次へと手を伸ばす。
大きく口をあけたところで、背後の気配に気がついた。
微苦笑を浮かべた直江が佇んでいた。

「……おまえも食う?モリからのおすそ分けだ」
上目遣いに問い掛けながら、返事も待たずに高耶は手にしたスモモにかぶりつく。
滴る果汁で顔を汚すのにも頓着しないその爛漫な様に、直江の笑いはますます深いものになった。
「……私はむしろこちらが気になる」
つっと伸ばした指先で、顎から口元へと逆しまに撫で上げ、拭った指を思わせぶりに口に含んだ。
「……なるほど、あまい」
あっけに取られた表情の高耶が我が意を得たりとばかりに頷いた。
「だろ?直江もひとつ……」
勧めようと籠に伸ばした手を直江の指が絡め取った。
「でも先に後始末をさせてくださいね」
スモモの果汁に濡れる高耶の手を引き寄せ、唇に当てて舐めあげる。
掌から指の股、指先一本一本に至るまで。視線を外さず、ゆったりとした動きで、明らかな意図を込めて。
彼の貌にも徐々に赤みがさしてくる。うっとりと蕩けていくその様子を見るのがまた愉しい。
ちゅぱっ……
舐られていた最後の指が直江の唇から離れた。
その小さな音に高耶ははっと我に返ったようだった。
「ばっ……か」
一度火が点いてしまった身体では、もうその口調に制止の気迫はないのに。
「ちゃんとこっちを食えよ!」
突きつけられたスモモをそっと籠に戻して、改めて告げた。
「食べるのならあなたがいい」
先ほどは指で拭ったところに、今度は思う存分舌を這わせた。喉から頤。そして唇。歯列を割って口腔へも。
彼の呼吸が次第に乱れる。強請るみたいに腰が揺れる。
もう彼は為されるがまま。
虚空に目線彷徨わせて身の内の快楽だけを追い始める。
そういうカラダに自分が仕込んだ。
「本当に気づかなかった?この果物はあなたにそっくりですよ? ぴんと張り詰めて硬そうな青い薄皮一枚の下に、驚くほど赤くて甘くて瑞々しい果肉を隠している……ねえ、まるっきり誰かさんと一緒でしょう?」
甘ったるい睦言も、もう彼の耳に届いているかどうか。
「……ほら、とろとろと甘い汁も滴ってきた。内部も柔らかく熟れて食べ頃ですね。では、そろそろいただきましょうか……」

そうして直江は、高耶という名の極上のネクタルを貪りはじめた。




#こうれんさまコメント#

素ん晴らしいイメージ画像をぶら下げてくださったので(^^)
まずは妄想爆裂の説明文を(爆)
久しぶりに遊びました。 こすげさん、どうもありがとうねvv

一年前と全く以下同文ってことで。。。
本当に本当にありがとうです♪



#こすげコメント#

こちらこそ、ニンジンどうもありがとうございます。
おかげさまで走れます〜!(いや、トロいけどね・・・・)
無自覚エロな高耶さんっ!大好物ですよっ!
また、よろしくお願いしますねv



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