(九)

すると、そこには昼間会ったお地蔵さんたちがいたのです。
どうやらさっきの音は、側にある大きな大きな米俵を下ろす音のようでした。
後から出てきた美弥ちゃんは、にこにこ顔のちんまりかわいいお地蔵さんたちに大喜びになりました。




(十)

「高耶さん、私は直江と申します。六体みんなで直江です。
あなたに会いたくって、毘沙門天さまにお願いして来たんです。
今日から、私が貴方の守護神になりますね。」
にっこり笑って、家に入ってくる直江地蔵ズに高耶さんは、唖然としてしまいました。
「まぁ、美弥も喜んでるし…」
ぶすくれ顔でそう言いながらも、ほんとは高耶さんも悪い気はしていません。




(十一)

朝になって高耶さんが目を覚ますと、部屋の隅にはお地蔵さんがちんまり佇んでいるのが見えました。
「あれれ、もう普通のお地蔵さんだ。夢だったのかな?
でも、それなら、こんなとこにいるワケないし…」
不思議に思って、コツコツトントンたたいてみても、お地蔵さんは、うんともすんともしないのです。




(十二)

「お兄ちゃん、首のとこ、どうしたの?赤いよ?」
美弥ちゃんに言われて見てみると、他にもあちこち、赤くなっているようです。
「ちょっとキスマークに似てるけど…」
「きっ…!て、何だよそれっ!」
「あはは、多分、気のせいよね?お地蔵さんしかいないしさ!」
(〜〜〜っ!)




(十三)

そうして、その日も夜になると、がさがさごそごそお地蔵さんたちは起きてきました。
「高耶さん、美味しいお鍋を作りましたよ。如何です?」
「って、動けんなら、お前ら帰れよ!」
「そっ…、そんなっ!」
「いいじゃないの、お兄ちゃん!良く働いてくれるしね?
キスマークつけられちゃてる仲なんでしょ?」
「うわあああっ!」




(十四)

「違います〜っ!」
慌てふためいて地蔵ズたちは叫びました。
「じゃあ、なんなの?」
美弥ちゃんが残念そうに訊いてみると
「だって、石なんですから、寝返り打ってぶつかると…」
「打ち身かよっ!」
「くっすん、信用ないですね?(せっかくガマンしてたのに…)」
「だって、お前ら、直江だろ?
でもまぁ、なんだ…。悪かったな?」




(十五)

おやすみの時間がきて、高耶さんが布団に入ると、またしても、わらわら寄ってくる直江地蔵ズたちでした。
「アザできるのイヤだしなぁ…」
すると、お地蔵さんの一人がむに〜っとほっぺを伸ばしました。
「これならどうです?ちょっと材質変えてみました♪」
「・・・・。まぁ、しかたねえかな・・・。」




(十六)

それでも、一応、忠告しておく高耶さん…。
「おまえら、ヘンなことしたら承知しね〜からなっ!」
「ヘンなことって何ですか〜?」
すっとぼけられてしまいました。